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エピソード2

私の師匠

小児科の依頼が来たけど受けていい?上司に言われ快諾しました。
生まれて3か月、とってもちいさな赤ちゃん。若いお母さんも人当たりがよく明るく育児も手慣れた様子。でも赤ちゃんは先天的に原因があり気管軟化症で気管切開と口から持続吸引、経鼻経管栄養で股関節脱臼、内反症もあり補正ベルトで体を固定していました。いわば重症心身障害児と呼ばれるお子さんでした。
でもお母さんはまったく違和感なく愛情を赤ちゃんに注ぎ、気切部からの吸引や注入、医療行為も手慣れたものでしたが私には違和感の連続でした。気管切開=酸素モニターの病院の常識をくつがえし、酸素モニターはつけておらず夜間は持続吸引すら外してしまう。経管栄養は飲み込むことが上手にできないことを意味し、そのため唾液を誤嚥しないため持続吸引を使用するのですが、夜間は唾液が減り、万が一唾液が溜まってきても「あ、寝てても気づくんで(笑)」の一言で持続吸引は止めてしまうというのです。
愛情たっぷりに赤ちゃんに接し訪問看護の助けなんてまるでいらない様子。それどころか、私はその若いお母さんからたくさんのことを学ばせていただきました。どれほど赤ちゃんが愛おしく大切な存在か、その気持ちに応えるように赤ちゃんも少しづつそして確実に成長をしていきました。
数字に頼らず目で見て感覚で感じる。いつもみているからこそ、気持ちを察していくことで気が付く変化がある。
母から向けられる感情や言葉や愛情が、確かな情緒の成長をはぐくんでいきました。この若いお母さんとの出会いは私の在宅看護の意味をさらに深め、彼女は今でも私の大切な師匠です。





ちいさな戦士

ちいさく生まれて入院したまま1年が過ぎ初めて退院した彼は、鼻にコアラの鼻のようなマスクを着け、マスクからは空気を送り込む管が頭上に伸びて機械につながっていました。その管を固定するための帽子をかぶり、もともと小さな顔からは小さな目と小さな口がかろうじて見えるぐらいでした。その口からも栄養剤を送り込む管が入り頬には固定するテープが貼られていました。
肺が弱くCPAPという呼吸器をつけていた彼は、吹けば飛んでしまいそうなほど頼りない細い体で体力のなさは目に見えており、入院中に「覚悟してください」と宣告されたことも幾度となくあったそうです。本来足の指先につけるべき酸素センサーは、指よりも大きかったため足の甲につけられていました。
小さく細く弱い彼のあどけない表情。この子を何としてでも守りたい、私の中に暗雲と戦う覚悟が芽生えました。その時「手を持つと立てるんです」と母。折れてしまいそうな細い脚。言われたように手を握ってみると自らの両足を突っ張って立派に立って見せた彼はこっちを見てドヤ顔をしました。その瞬間すがすがしい風が衝撃音とともに私の中の暗雲をすべて吹き飛ばしていきました。周囲の心配なんてなんのその、自分にハンディキャップがあるなんて気が付きもせず、彼は好奇心強く日々を楽しみ確実に成長をしていきました。その姿はまるで小さな戦士。逆境を逆境とも思わずつかまり立ちができるようになり、伝い歩きができるようになり、いつの間にか行動範囲が彼をつなぐカテーテルや蛇管よりも広くなり、彼を追いかけるように機械を動かす日々。そして呼吸器が外れ、酸素が不要になり、ついには栄養剤の管すら不要になり、今では元気に一般の保育園に通うまでになりました。そして今日も小さな戦士は愛らしい笑顔を見せてくれています。「医療に生命力は測れない」彼は私にそう教えてくれました。


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