医療ケアが必要になっても、高齢になっても、認知症になっても、「住み慣れたおうちで暮らす」
そんなことが当たり前になる社会を目指しています。

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認知症について

老化ともの忘れのご理解

加齢に伴って生体機能が低下することを老化といいます。
老化のおおくは30歳以降に始まり、進行は人によって様々です。
老化していくことは決して病気ではありません。

人は加齢とともに老化し、脳も自然と老化してゆく生理現象です。

よって高齢になると記憶の中でも新しいことを覚えることや、注意力、集中力を保持することが困難となる為、もの忘れしやすくなります。

さらに、身体や心の機能も老化していくます。

出来ることが少なくなっていったり、老化してゆく自分を認めることが出来ずに困惑したり、自己の疎外感が強くなる傾向となります。

したがって、高齢者は精神的に不安定になりやすい状態にあるということです。

お年寄り、一人ひとり、初めて老いるという経験をしながら日々葛藤されていることをご理解下さい。

認知症の問題と対応

厚生労働省の統計では団塊の世代が後期高齢者になる2025 年には、認知症の問題はさらに深刻になると言われています。その問題となっている認知症と呼ばれる対象の 80~90%は、80 歳以後に発症する後期高齢者の認知症です。高齢になって、物忘れをするようになり、それまでは出来ていたことが少し出来なくなっただけで周囲の方が認知症と決めつけている状況にはないでしょうか。認知症という言葉は広く知られるようになり、早期診断や早期治療の有効性が国民に認知されていますが、それに加えて病気やその状態を正しく理解する必要があります。
高齢者の認知機能の低下には、脳の老化のほかにその人の老年期にいたるまでの社会活動や生活習慣、生きる姿勢などが関係しています。認知症を理解するためには、その人のそれまでの生活史や心身の状態、高齢期までの生活習慣などを知る必要があり、それはその人自身を理解することに繋がります。後期高齢者の認知症の多くは,加齢に加えて、その人の生きざまや生活習慣が原因になることも多いのです。例えば、仕事を引退して毎日自宅でゴロゴロ生活をしていたり、仕事がないからと昼間から飲酒をしたり、持病の内服薬や健康管理が全く出来ていなかったりするなどの生活を送っていると、徐々に認知機能は低下していきます。しかしながら、これまでの生活習慣を後期高齢者自らが変えようとすることは大変難しいことです。またそれをご家族が修正しようとする場面もみられますが、夫婦喧嘩や親子喧嘩に至ることも多く、次第に家族や地域から孤立していき、認知症は進行して、自宅で生活が出来ない状態に至る事例もあります。

そこで我々、訪問看護ステーションIRODORIの出番です。

訪問看護というと、自宅で点滴をしたり、傷の処置をしたり、医療的な管理を行うイメージが強い印象にありますが、当ステーションはそれに加え、認知症の在宅支援に力を入れています。

認知症を患う方はお薬の管理が出来ていないことが多くあり、体調不良や意欲低下の原因となっています。当ステーションでは内服や健康管理を行いながら、生活指導を行っていきます。きちんと決められた用法用量で服薬することで体調も改善していきます。しかしながら、訪問看護を利用したからと、すぐに生活習慣が改善されたり、効果が得られるものではありません。長い期間をかけ、訪問した看護師が言うのであれば、「じゃあやってみようか」という信頼関係を構築していきます。これまでの生活史やご本人の性格等を考慮し、適度な距離感を保ちながら、徐々に徐々に生活の仕方や他の介護保険サービス利用についてのアドバイスもさせて頂き、介護支援専門員と連携していきます。また、利用されているご本人だけではなく、同居されている方の心理的サポートにも力を入れており、認知症ケア専門士である相談員(社会福祉士、精神保健福祉士)が必要に応じて対応させて頂きます。また、ご本人の状態に応じて主治医や専門医に相談していくことを必要かもしれませんが、そのお手伝いもさせて頂きます。認知症と呼ばれる状態をご本人やご家族が納得する支援をするためには、加齢によるものか病気としての認知症であるのかを専門医を受診する等して、対応を検討する必要があります。難しいことですが、その後の対応に大きな影響を与えます。

一人一人が、後期高齢者の認知症の背景を理解し、地域でお互いに支えあうことが、これからの介護の課題と考えており、認知症になっても「住み慣れたおうちで暮らす」そんなことが当たり前になる社会を目指します。

問題行動?

認知症の方が今まで当たり前のようにできていたことが出来なくなることは、その方自身が一番辛くて不安な気持ちではないでしょうか?そのことを考えながら読んで頂けると幸いです。

これまでの相談業務の中で「問題行動」が酷くて大変です。そんな相談を多く受けてきました。その「問題行動」は本当に認知症の人が問題を起こそうとして行われる行動なのか、そんなことを考えます。専門職や医療・介護福祉職の方々の中にも認知症の行動心理症状(BPSD)= 問題行動と思ってらっしゃる方もおられるようです。

その「問題行動」と世間で言われる認知症による様々な行動(BPSD、行動心理症状)は、実は認知症の方からしてみると正当な世界であり、正しいと思っているからこそ行う、行ってしまう行動なのです。
「不安な気持ちを解消するための行動」、つまり心理学でいう対処行動(コーピング)であり、認知症や高齢者の方々だけではなく、子どもやごく一般の方々にもみられる行動で、見方を変えると「問題行動」という表現すら適切ではないということになります。

認知症の方は決して「誰かを困らせよう」などと思って行動をしているのではありません。抱えている問題やストレスを解消させる為に「病気がそうさせている」と思うことで、その方のいろんな行動が見えてくることも多いということを知っていて欲しいのです。

しかしながら、ご自宅で認知症の方を長年介護していくことは、こころもからだも体力を使うものです。そこには「この介護はいつまで続くのか。」という思いや、「今の状況から脱したい。」という思いがあるのではないでしょうか。

私達は、認知症や介護をキレイな言葉だけでまとめるつもりはありません。

実際におうちで認知症の方を看るご苦労が簡単ではないこともちゃんと判っています。だから、「もしそうなったら(=自分自身が介護者になったら)・・・(自分は)どうしようかな?」と考えながらお話を聞いています。そうやって考えながら対応させていただいているうちに認知症は「人の数だけある人生学」だなと勉強させてもらっていることに気付きました。だから認知症介護や認知症支援は難しく、悩ましいのです。分からない所からスタートして、疑問を解決していく為には時間をかけて「その人」を理解していく必要があります。

したがって、認知症の方が行われる「不安な気持ちを解消するための行動」は、これまでの生活史、環境、心境やその時の体調が大きく関わっている行動であり、介護される方々は「何でこんな事をしたのだろう」と一歩立ち止まって想像する。そんな介護のやり方も必要ではないでしょうか。

「介護にそんな時間はない」と言われれば、その通りです。しかし、そこで一歩立ち止まって考えなければ、認知症の人の「不安な気持ちを解消するための行動」はいつまでも「問題行動」のままになり、介護者のストレスも負のスパイラルへと陥ってしまいます。

その一歩立ち止まる機会が皆様にはありますでしょうか。
1つの方法として、当ステーションに相談してみてはいかがでしょうか。

介護者の「なぜ?」を一緒に考えて行きます。介護の方法によっては、成功もあれば失敗もあるかと思います。いろんな介護者の方の成功談や失敗談が当ステーションの糧となります。そして、私達が受ける介護者の「疑問や質問」あるいは「不安や不満」をどう捉え、そしてどう伝えていくか、どう解決していくかが課題です。

今まで当たり前のようにできていたことが出来なくなることの不安を支えていくのが、認知症介護に必要なあり方ではないでしょうか。

このような考え方が認知症のイメージをほんのわずかでも変えていくきっかけになればと思うのです。

 

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