1. 目的
事業所や利用者家族などによる高齢者虐待を防止するための各種活動や体制を整備することを目的として、本指針を策定する。
2. 基本的考え方
利用者のQOL維持・向上を目的とする介護において、高齢者虐待はあってはならないものであり、高齢者への虐待を防止することは最優先事項である。
この際、高齢者虐待の発生は、個人の要因のみでなく、組織やシステムの要因も関与することを理解することが必要である。
そのため、高齢者虐待防止について各職員が理解し、適切かつ効果的な対応を実施するだけでなく、組織として虐待防止に取り組むことが重要であるため、法人内に虐待防止に関する担当者を設け、虐待防止委員会を設置する。併せて、虐待防止に関する正しい知識と技術、システムを向上させるための研修会を定期的に開催する。
3. 管理体制
(1) 担当者
事業所や利用者家族などによる虐待の防止を推進し、虐待ゼロを実現・継続するために、虐待防止の担当者を設置する。担当者は、虐待防止委員会の委員長が兼務する。
(2) 虐待防止委員会
事業所や利用者家族などによる虐待の防止を推進し、虐待ゼロを実現・継続するために「虐待防止委員会」を設置する。
① 委員会の構成
虐待防止委員会は以下の者で構成する。
・管理者/施設長
・虐待防止担当者(委員長兼務)
・看護職員
・介護職員
・生活相談員
・その他
② 委員会の業務
虐待防止委員会は、年に2回の定期開催のほか、委員長の招集により必要に応じて開催し、次に掲げる事項について審議する。
・国内での虐待に関する情報収集、分析、対策計画の策定
・利用者の状況把握、分析、対策計画の策定
・職員、職場の状況把握、分析、対策計画の策定
・虐待の一歩手前となる「不適切ケア」の把握、分析、対策計画の策定
・各部での虐待防止対策実施状況の把握、分析、対策計画の策定
・職員研修の計画立案、実行
・本委員会その他事業所内の組織に関すること
・指針の整備に関すること
・虐待に関する相談・報告体制、市町村への通報、確実な再発防止策とその効果評価に関する
こと
・その他、虐待防止に関すること
③ 会議結果の周知
委員長は、委員会の結果について職員に周知すること。
(3) 職員研修
事業所職員に対し、高齢者虐待防止の知識・技術、システムの習得、向上を目的として、虐待防止委員会の企画により、以下の通り実施する。
① 新規採用者対象
新規採用時に基本的事項に関する研修を実施する。
② 全職員対象
年1回、全職員を対象として虐待防止に関する研修を行う。
③ その他
上記のほか、必要と思われる対象者・部署に、必要と思われる時期に研修を行うことがある。随時、虐待や虐待防止に関する情報を提供する。
研修の内容については記録し保存すること。
(4) 虐待防止に関する情報提供
随時、虐待防止意識を高めるために、国内外で発生した虐待の実例や虐待防止の好事例について、職員へ情報提供し、自部署での虐待防止策の構築に役立てる。
① 対象者
全職員を対象とする。
② 実施回数
不定。
③ 実施方法
虐待発生の事例や虐待防止の好事例について、新聞記事、ネットニュースなどの内容を伝達する。事例を自部署での虐待防止対策に役立てる。
4. 平常時の対応
(1) 不適切ケアの解消
① 不適切ケアのチェックリスト
虐待に至る前の「不適切なケア」の段階から、その発生解消を図ることが重要である。その一環として、定期的に「不適切ケアのチェックリスト」にて、自身、自部署のケアをチェックする。
② 相互協力
日ごろより、お互いにそれぞれのケアが適切なレベルに保たれているか注意し合うことが大切である。そのために、随時、それぞれの職員の不適切ケアについて話し合う。
③ 倫理観のチェック
部署全体の判断基準そのものが低下してしまうと、不適切ケアが行われていてもチェックリストや相互チェックで見いだすことが困難となり、不適切な言動も『これくらいなら問題ないだろう』と判断されてしまうため、部署全体の倫理観の低下防止、向上が必要となる。
その方策として、部署の倫理基準が良好かを定期的に相互チェックする「他部署見学研修」と「虐待防止委員会の訪問チェック」などを実施する。
(2) 利用者・家族の判断調査
① 利用者定期調査の実施
利用者・家族へ自部署のケアの満足度や要望などについて、定期的に聞き取りや書面調査などのアンケートを実施する。
② 苦情受付窓口の設置
苦情に関する受付窓口、意見箱などの設置をする(既存窓口の活用も可)。
(3) 利用者の観察
職員は、利用者の異常をより早期から発見するために日ごろから注意深く観察すること。この際、特に以下の状況を発見したら早急に対応すること。
・利用者の体にあざがある
・服が汚れたまま、部屋が汚れたまま、部屋から異臭がする
・家族を恐れるそぶりをする
・不適切なケアを示唆する利用者の言動
・その他
5. 虐待発生時の対応
虐待発生時の対応は以下の通りとする。
・虐待を疑った場合は、すぐに管理者または法人本部に報告すること
・管理者、法人本部は、至急、事実関係の調査に当たること
・虐待に当たる場合は速やかに自治体に報告すること
・緊急対応が必要と思われる場合は、必要な防止策を速やかにとること
・発生に至る経過を分析し、早急に再発防止策を立て、関係者、自治体などへも報告すること
6. 虐待発生時の相談・報告体制について
虐待発生時の相談・報告体制は以下の通りとする。
・虐待およびその恐れがある事象を把握した者は、迅速に部署管理者に相談・報告する
・管理者への相談・報告が困難な場合は、虐待担当者へ相談・報告する
・虐待担当者への相談・報告が困難な場合は、法人本部へ相談・報告する
・法人本部への相談・報告が困難な場合は、市町村へ相談・報告する
・上記には、相談・報告が困難な場合のほか、相談・報告しても事態が改善されない場合も含む
7. 成年後見制度の利用支援について
・職員および委員会は、利用者から成年後見制度に関して、相談、利用の申し出があった場合は、積極的に支援すること
・職員は、利用者からの申し出がない場合も、成年後見制度の利用が本人の生活の質の改善に効果的だと判断した場合は、管理者または委員会へ相談・報告すること
・管理者または委員会は、相談・報告を受けた場合または、自らその必要性を把握した場合は、成年後見制度の利用が本人の生活の質の改善に効果があるかどうかを判断し、必要がある際は、積極的に相談・支援を申し出ること
8. 虐待に関する苦情解決について
・虐待に関する苦情については、迅速かつ丁寧に対応すること
・苦情解決への対応策は、本人、家族へ丁寧に説明すること
・苦情があった場合は、緊急に委員会を開催し、その内容について把握・審議すること
・必要に応じて、虐待に関する専門家、法律関係者などを交えて解決方法について協議すること
・必要がある場合は、公正中立な第三者機関、法的機関、自治体を交えて協議、対応すること
9. 情報提供(閲覧)の方針
本指針は、利用者、家族から閲覧の求めがあった場合は、これに応じるものとする。
10. その他
本指針は虐待防止委員会において定期的に見直し、必要に応じて改訂するものとする。改訂時には、改訂内容について、全職員に周知徹底する。
附則
本指針は令和 5年 4月 1日より施行する。
(以後、改訂時には改訂年月日[令和 年 月 日 改訂]を入れる)
身体拘束等の適正化のための指針
1.身体拘束廃止に関する基本的な考え方 身体拘束は利用者の生活の自由を制限するものであり、利用者の尊厳ある生活を阻むものである。利用者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく職 員一人ひとりが身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識を持ち、身体拘 束をしない支援の実施に努める。
(1)身体拘束及びその他の行動を制限する行為の原則禁止 原則として、身体拘束及びその他の行動を制限する行為(以下「身体拘束等」 という。)を禁止とする。 (2)身体拘束等を行う基準 やむを得ず身体拘束等を行う場合には、以下の3要件を全て満たす必要があり、その場合であっても、身体拘束等を行う判断は組織的かつ慎重に行う。
①切迫性 利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる
可能性が著しく高いこと。
②非代替性 身体拘束等を行う以外に代替する方法がないこと。
③一時性 体拘束等が一時的であること。
(3)日常的支援における留意事項 身体拘束等を行う必要性を生じさせないために、日常的に以下のことを取組む。
① 利用者主体の行動・尊厳ある生活に努める。
② 言葉や応対等で利用者の精神的な自由を妨げないよう努める。
③ 利用者の思いをくみ取る、利用者の移行に沿った支援を提供し、多職種協 働で個々に応じた丁寧な対応をする。
④ 利用者の安全を確保する観点から、利用者の自由(身体的・精神的)を安 易に妨げるような行動は行わない。
⑤ 万一やむを得ず安全確保を優先する場合、身体拘束適正化委員会において検討する。
⑥「やむを得ない」と拘束に準ずる行為を行っていないか、常に振り返りながら利用者に主体的な生活をしていただけるよう努める。
(4)情報開示 本指針はホームページにて公表し、利用者等からの閲覧の求めには速やかに応ずる。
2.身体拘束適正化に向けた体制
(1)身体拘束適正化委員会の設置 身体拘束の廃止向けて身体拘束等適正化委員会を設置し、その結果について従業者に周知徹底を図る。
①設置目的
(ア)事業所内での身体拘束等廃止に向けての現状把握及び改善についての検討 (イ)身体拘束等を実現せざるを得ない場合の検討及び手続き
(ウ)身体拘束等を実施した場合の解除の検討
(エ)身体拘束等廃止に関する職員全体への指導
②委員会の構成員 委員会は管理者、虐待防止・事故対策委員からそれぞれ1名。 委員会は上記構成員をもって構成するほか、必要に応じてその他職種職員を参加させることができることとする。
(2)やむを得ず身体拘束等を行う場合の対応 本人又は他利用者の生命又は身体を保護するための措置として緊急やむを得ず 身体拘束等を行わなければならない場合は、以下の手順をふまえて行うことと する。
(ア)利用前
① 事前の情報で緊急やむを得ず身体拘束等を必要とする場合は身体拘束等適 正化委員会にて協議する。
② 身体拘束等の内容、時間等について、個別支援計画等に記載し、利用者及 び家族に対し現場責任者が説明を行い、「緊急やむを得ない身体拘束に関 する同意書」を以て同意を得る。
(イ)利用時 利用中の経過から緊急やむを得ず身体拘束等を必要とする場合は、身体拘 束等適正化委員会において実施件数の確認と身体拘束等をやむを得ず実施 している場合(解除も含む)については協議検討し、議事録に残す。
(ウ)身体拘束等の継続と解除
① 身体拘束等を行っている間は日々経過観察を行い、「緊急やむを得ない身 体拘束に関する経過観察・検討記録」を用いて、身体拘束発生時にその態 様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由そ の他必要な事項を記録する。 ② 身体拘束等適正化委員会において協議し、継続か廃止かの検討を行う。
③ 身体拘束等継続の場合は、引き続き日々の経過観察を行い、「身体拘束経 過記録」に記録する。
④ 身体拘束等解除の場合は即日、相談員より家族に身体拘束等解除について 説明し同意を得る。
(エ)緊急時
① 緊急やむを得ず身体拘束等を行うときは、職員同士で協議し緊急やむを得 ない理由をケース記録に記録する。その後の事は身体拘束等適正化委員会 において協議する。
②家族への説明は翌日までに相談員が行い、同意を得る。 3.身体拘束等に向けた各職種の役割 身体拘束等の廃止のために、各職種の専門性に基づくアプローチから、多職種協働を基本とし、それぞれの果たすべき役割に責任を持って対応する。
(管理者) 身体拘束廃止・適正化の検討に係る全体責任者
(管理者) ① 身体拘束等適正化委員会の統括管理
② 支援現場における諸課題の統括管理
③ 身体拘束等廃止に向けた職員教育
(虐待委員)① 家族、相談支援専門員との連絡調整
② 本人の意向に沿った支援の確立
③ 施設のハード・ソフト面の改善 ④ 記録の整備
(看護師・介護士)
① 拘束がもたらす弊害を正確に認識する。
② 利用者の尊厳を理解する。
③ 利用者の疾病、障害等による行動特性の理解
④ 利用者個々の心身の状況を把握し基本的ケアに努める
⑤ 利用者とのコミュニケーションを充分にとる
⑥ 記録は正確かつ丁寧に記録する
4.身体拘束等廃止・適正化のための職員教育、研修 支援に関わる全ての職員に対して、身体拘束等廃止と人権を尊重したケアの励行 を図り、職員研修を行う。
① 年間研修計画に基づく定期的な教育・研修(年1回以上開催)の実施。
② 新任者採用時は、新任者のための身体拘束等廃止・適正化研修を実施。
③ その他必要な教育・研修の実施。
④ 上記教育・研修の実施内容については記録を残す。
附 則 この指針は、令和6年4月1日より施行する。