ゆうらくからのお知らせ
三好春樹著(ちくまライブラリー)からの引用です。
<老人が嫌がることはしない>
介護の現場から、いろんな提言をされている三好さん。
「いい介護とは『「老人が嫌がることはしない』なのです」と言われています。
以下は本書P.37~の要旨を抜き書きしてみました。
「老人が嫌がることはしない」というのは、なんでも老人のしたいようにするということではありません。たとえば、入浴を拒否する人はほんとに多いんです。(中略)
だからといって、「入りたくない」、「ああ、そうですか」と言っていたんでは、1年中入浴しない人ばかりになってしまいます。しかし、ご本人の納得なしに入浴して貰っても、お年寄りと介護者との基本的な信頼感が失われてしまいます。
特に認知症と呼ばれている人たちは、何のために入浴するのか、介護者が何のためにこんなことをしているのか理解することはできません。ただ、自分が嫌がることをされたという感情だけが残るのですから、落ち着いてくれる訳がありません。ですから私たちは、何とか本人に嫌がられないで入浴してもらうために、言葉巧みに言いくるめるのが上手くなります。ときにはお年寄りをだますこともあります。(中略)
認知症のお婆さんが自宅や施設から出ていこうとします。「家に帰らにゃいかん。子供が泣いてるから」なんて訴えます。もちろん「子ども」はもう立派な社会人なのですが、説得は逆効果で、帰らなきゃという強迫観念を強めるだけです。
薬を飲ませて「大人しく」させている介護現場もありますが、これは感心できるやり方ではありません。だってこうした「問題行動」すらできない状態にしてしまうのですから。(中略)
そこで私たちは、薬という化学物質で老人をコントロールしようとするのではなく、さらに説得したり、無理にとめようとするのでもない別の方法を作り出すことになります。
さらに、出ていこうとするその場でどう対応するかということだけではなく、どうすれば出ていかなくてすむのか、「家に帰る」というコトバで訴えていることの本当に意味は何なのかと考えていくことになります。それが、「認知症ケア」の始まりと深まりなのです。(後略)
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